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ごみってそもそも何?「廃棄物」の定義を探る

── 捨てるから、循環させる時代へ

はじめに

「これって資源? それともごみ?」

「まだ使えるのに捨てるって、なんだかもったいない」

「家庭で出た残飯と飲食店で出た残飯って、同じ“ごみ”じゃないの?」

日常の中でふと感じる“ごみの境界線”。

私たちは、どんな基準で「ごみ」と判断し、どのように処理しているのでしょうか。

前回は「なぜ分別が必要なのか」を社会背景と法律の面から整理しました。

今回はもう一歩踏み込み、「そもそも“ごみ”とは何か」――つまり、資源の循環を考える出発点について探っていきます。

そして、家庭系と事業系の違い、地域による制度の差を見ながら、持続可能なリサイクル社会に向けて何ができるのかを考えていきます。

「ごみ」とは何か ― 法律で見る「廃棄物」の定義

私たちが普段「ごみ」と呼んでいるものは、法律上では「廃棄物」と定義されています。

これを定めているのが「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」です。
(参考:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)

廃掃法によると、廃棄物とは

「占有者が自ら利用できず、かつ他人に有償で売却できないため不要になった固形または液状のもの」

(出典:e-Gov法令検索/廃掃法

つまり――

  • 自分で再利用できる → ごみではない
  • 他人に売れる(=商品価値がある) → ごみではない
  • どちらでもない → 廃棄物(=ごみ)

たとえば段ボール。使い終われば不要物になりますが、資源回収に出すことで「古紙」という再生資源に変わります。

このように、「ごみ」と「資源」の境界は固定されたものではなく、人の意識と社会の仕組み次第で“循環資源”に生まれ変わるのです。
(参考:全国都市清掃会議

ポイント
  • ごみの定義は「利用できず、売れないもの」
  • 使い方と仕組み次第で“ごみ”は“資源”になる

一般廃棄物と産業廃棄物

廃掃法では、廃棄物を「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類しています。

  • 一般廃棄物:家庭から出る生活系ごみ、飲食店やオフィスなどの日常系ごみ
  • 産業廃棄物:建設廃材、廃油、廃プラスチックなど、事業活動に伴う特定の廃棄物

ここまでは比較的シンプルですが、ややこしいのが「家庭ごみ」と「事業ごみ」の違いです。

実は、一般廃棄物の中にも「家庭ごみ」と「事業ごみ」の2つがあり、多くの人が混乱しやすいポイントです。

家庭ごみと事業ごみ ― 同じように見えて役割が違う

家庭から出る生活系のごみは、市区町村が責任をもって収集します。

分別ルールに従い、リサイクルやエネルギー回収(焼却熱利用など)へと循環していきます。
(参考:名古屋市 ごみ・資源情報

一方、商店や飲食店・オフィスなどから出る事業ごみ(事業系一般廃棄物)は、排出事業者自身が処理責任を負うのが原則です。(廃掃法第3条)

自治体の許可業者との契約が必要で、分別状況や排出量によりコストも変動します。

見た目は同じでも、扱い方や責任の所在が異なります。

つまり、「誰が出したか」でリサイクルのルートが変わるのです。

ポイント
  • 家庭ごみ → 自治体が回収
  • 事業ごみ → 事業者が自ら処理責任
  • 排出者によって“循環ルート”が変わる

名古屋市・北名古屋市・東京23区 ― 地域で違う「循環のしかた」

分別ルールや回収の仕組みは全国共通ではありません。

自治体ごとに制度や運用が異なり、事業者・市民の負担や意識にも差が生じます。

地域家庭ごみ事業ごみ(処理のあり方)特徴
名古屋市

(参考:名古屋市公式
市が回収
(可燃・不燃・資源の3分別)
市は原則として事業系ごみを収集しないが、事業者は許可業者へ委託または自己搬入して処理手数料を支払う必要がある。分別ルールが詳細に定められており、事業者は適正処理のための契約や自己搬入の運用を行う必要がある。
北名古屋市

(参考:北名古屋市公式
市が回収
(可燃・資源・粗大など)
事業系ごみは原則市では収集せず、事業者が許可業者に委託して処理する必要がある。小規模自治体だが冊子等で細かく分別案内を配布しており、市民の分別意識向上に注力している。
東京23区

(参考:東京都環境局
区が回収
(可燃・不燃・資源等、区ごとに細部差あり)
事業ごみは基本的に区が直接収集せず、許可を持つ民間業者へ委託して処理する。民間委託により追跡性・透明性は高いが、業者選定・契約やコスト管理の負担が事業者側にかかる。

地域によって違いはありますが、どの制度も“資源を循環させる”という目的は同じです。

現場で起きている“ごみの混乱”

「収集日に出したのに袋が残されたままだった」

「地域や業者によって分別ルールが違う」

そんなトラブルの裏には、分別基準の複雑さがあります。

特に容器包装やプラスチック類など“見た目では判断しにくい素材”が混乱を招きやすいのです。

主な課題は以下のとおりです。

  • 可燃ごみの中に不燃ごみや回収困難物が混ざっていて、収集業者の判断で収集車に積み込まれず、そのまま残される
  • 分別ルールを把握していないアルバイトやスタッフによる誤分別
  • 店舗ごとに契約している収集業者が異なり、分別基準が統一されていない
  • 地域によって処理料金が異なり、コストの全体像が見えづらい

しかし、これらは“ごみの問題”というより、「資源循環をどう設計するか」という社会の仕組みの問題です。

デジタル管理やIoT活用など、現場の見える化が進めば、循環の質もさらに向上していくでしょう。

ごみを理解することは、資源を守ること

「ごみを知ること」は「資源を見つけること」です。

廃棄物を単なる“不要物”と捉えるのではなく、再び社会に戻るための通過点と考えることが、持続可能な社会の第一歩になります。

廃棄物の定義や責任の所在を知ることで、家庭でも職場でも、「自分が出したものが、どんな形で再び役立つのか」を意識するだけで、分別の精度も変わっていきます。

まとめ

  • 「ごみ」と「資源」は、扱い方と意識で変わる
  • 家庭系と事業系では、ルートと責任が異なる
  • 正しく理解することが、リサイクル社会の原動力になる

次回は、「ペットボトルは資源? ごみ? どっち問題」をテーマに、“資源と廃棄物のあいだ”にあるグレーゾーンを見ていきます。

“捨てる”から“一緒に循環させる”へ。次の一歩を考えていきましょう。